ビクター・ウェンバニャマは昨季、新人ながらディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーの2位となり、2024-25シーズンには同賞の最有力候補の一人として臨んでいる。
ただ一つ問題がある。チェット・ホルムグレンという存在がそこに立ちはだかろうとしているのだ。
シーズンはまだ始まったばかりで、取り上げるには時期尚早ではあるが、第1週の最優秀守備選手はウェンバニャマではなくホルムグレンが受賞した。誤解のないように言うと、両選手とも圧倒的な活躍を見せたのだが、よく見るとホルムグレンの方が優れており、賞を獲得する道がずっと容易といえる。
チェット・ホルムグレンがビクター・ウェンバニャマのDPOY最大のライバルである理由
ホルムグレンのリムプロテクターとしての秀逸さ
ウェンバニャマは昨年、リーグ最高のリムプロテクターで、1試合平均3.6ブロックという素晴らしい成績を残した。今年は1試合平均2.7ブロックに落ちているが、これはおそらく、選手たちが彼の能力を認識し、彼に対するアタックを控えているためだろう。
印象的なブロックは今も健在だ。例えば、ウェンビーがヒューストンのタリ・イーソンを誘い出して速攻ダンクのチャンスがあると思わせた場面を見てみよう。
動画にある様に驚異的なディフェンスは健在だ。
一方で選手たちはホルムグレンに対しては、昨季よりずっと頻繁にリムアタックに挑戦しているが、まるで上手くいっていない。彼は6フィート以内のフィールドゴール防御でリーグトップであり 、今シーズンここまで彼より多くのシュートをブロックした選手はいない。
その他の守備統計からも、ホルムグレンが序盤で優位に立っていることが見て取れる。
チェット・ホルムグレン | 統計 | ビクター・ウェンバニャマ |
---|---|---|
4.0 | 1試合あたりのブロック数 | 2.7 |
1.3 | 1試合あたりのスティール数 | 0 |
10.0 | 1試合あたりのディフェンスリバウンド数 | 9.3 |
40.5% | 6フィート以内の相手のFG% | 47.8% |
ホルムグレンが1試合平均4.0ブロックを記録し続ければ、それは1996年にディケンベ・ムトンボが記録した1試合平均4.5ブロック以来の最高記録となる。その時点で彼に賞を授与しない理由はないだろう。
ホルムグレンの方が受賞対象として有利
純粋に才能だけを基準にすれば、ウェンバニャマはホルムグレンよりも優れたディフェンダーだろう。ウェンバニャマの、8フィートのウィングスパンと優れた機動力を考えると、NBA史上最高のディフェンダーになるかもしれない。しかし、他の賞と同様に、DPOYは主にチームスタッツも重視している。通常は、優秀なディフェンシブチームのトップディフェンダーに与えられる。
ここで過去10シーズンの受賞者を見てみよう。
季節 | プレーヤー | チームの守備順位 |
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2023-24 | ルディ・ゴベール | 1位 |
2022-23 | ジャレン・ジャクソン・ジュニア | 2位 |
2021-22 | マーカス・スマート | 2位 |
2020-21 | ルディ・ゴベール | 4位 |
2019-20 | ヤニス・アデトクンボ | 1位 |
2018-19 | ルディ・ゴベール | 2位 |
2017-18 | ルディ・ゴベール | 2位 |
2016-17 | ドレイモンド・グリーン | 2位 |
2015-16 | カワイ・レナード | 1位 |
2014-15 | カワイ・レナード | 1位 |
ホルムグレン率いるサンダーは、リーグ最高のディフェンス力でシーズンを終える可能性が高い。サンダーは現在、圧倒的な差で1位につけているが、ウェンバンニャマ率いるスパーズは19位だ
勿論これはホルムグレンのおかげだけではない。サンダーにはリーグ最高のペリメーターディフェンダーが揃っている。オールディフェンシブに2度選ばれたアレックス・カルーソを筆頭に、ルー・ドート、ジェイレン・ウィリアムズ、ケイソン・ウォレス、アーロン・ウィギンズ、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーもいる。この6人はリーグのトップ25ペリメーターディフェンダーのうちの6人(The Sporting Newsのシーズン前レポート)で、全員が同じチームに所属している。彼らのようにボールストップできるチームメイトがいると、ホルムグレンの仕事はずっと楽になる。
一方、ウェンバンニャマは、まさに正反対のチーム状況下に身を置いている。
ウェンビーのチームメイトは誰一人として同レポートのトップ100にも入らなかった。彼は昨季NBA最悪のディフェンス陣に加わり、スパーズは今でもそのメンバーのほとんどを起用している。新加入のクリス・ポールとハリソン・バーンズは10年前と同レベルの守備ができておらず、年齢のせいでそれぞれのポジションでのオンボールディフェンスは平均以下だ。ウェンビーは一人でそのディフェンスを担わなければならないが、彼がチームのディフェンスをほぼ平均レベルにまで引き上げているのは奇跡だ。
スパーズが守備でトップ10入りできなければ、ウェンバニャマがどれだけ圧倒的な活躍を見せても同賞を与えるのは前例を大きく変えることになる。2000年代にトップ10入りを果たした唯一の選手は、2006-07シーズンのナゲッツで11位にランクされたマーカス・キャンビーのみだ。
まだシーズンが始まったばかりなので、状況が変わる可能性もあるが、この序盤はホルムグレンが意外なほどリードしている。ウェンバンヤマが彼から賞を奪い取ることは困難な道と言わざるを得ない。今後の2人のパフォーマンスから引き続き目が離せない。
引用元:The Sporting News